採集
耳がふたつ。
舌はひとつ。
どちらにも、沢山のピアスが輝いている。
「なんてものを」
父は顔面蒼白。弟から震える手でそれを受け取る。
「なんてものを、弟に持たせるんだ?」
声は揺れる。裏返る。
分かっている。
これは本物の、人の身体の一部。
イチトは何も返答ができない。
彼の背負うカバンには、ピアスが埋め込まれた肩と、腹部の一部が入っている。
これだけしか持って帰って来られなかった。
「ピアス」
混乱で渦巻く頭ではろくな言葉が出てこない。
「つけてて良かった」
姉の行為を肯定する。
「帰ってこれたから」
付けている箇所だけだ。
了