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採集

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1024f

 耳がふたつ。
 舌はひとつ。
 どちらにも、沢山のピアスが輝いている。

「なんてものを」
 父は顔面蒼白。弟から震える手でそれを受け取る。
「なんてものを、弟に持たせるんだ?」

 声は揺れる。裏返る。
 分かっている。
 これは本物の、人の身体の一部。

 イチトは何も返答ができない。
 彼の背負うカバンには、ピアスが埋め込まれた肩と、腹部の一部が入っている。
 これだけしか持って帰って来られなかった。

「ピアス」
 混乱で渦巻く頭ではろくな言葉が出てこない。
「つけてて良かった」
 姉の行為を肯定する。
「帰ってこれたから」

 付けている箇所だけだ。

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