十字路に拾う神あり
「おーい枕木!」
「松尾さん!?」
自動販売機の隣に立ってタバコをふかしていたのは野球部の先輩だ。ポジションはキャッチャー。前に会った時より、もっと太った気がするとハバキは考えたが口には出さない。
「今ヒマか? うちの会社来いよ」
「ダイタンなお誘いっすねぇ。ヒマしてるように見えました? あいにくオレも仕事中なもんで」
「ヒマに見えたんだけどなぁ。うち、そこらの会社よりいい給料出すぜ?」
「『博物館』よりお金、出ます?」
ハバキのなんてことない問いに、松尾は困った顔を浮かべてタバコを指先で弄びだす。
「あー……ちょっとそれは厳しいわ。オマエ、なんでハクブツカンなんかに行ったんだよ。金か? 金だよな。うん……」
「松尾さんの会社でオレ何ができます?」
「配送とか」
「今似たようなことしてるんで」
「そっか。枕木、バケモノに襲われる前に転職しろよ? 死んでからじゃ、うちは雇ってやれないぜ」
「あっはは、幽霊になって顔出ししますわ」
「幽霊か……」
「松尾さんオバケ苦手でしたっけ」
「なめんじゃねぇーわ。チビ連れてどんだけお化け屋敷に通ったと思ってんだよ」
一瞬、ハバキの脳内にモルグ市総合病院の暗い廊下がよぎって。
「……それじゃ、松尾さんオタッシャで」
「体こわすなよー」
松尾さんには分かんないよなと、その足でハバキは病室のバケモノに会いに行く。
了