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易しい拷問

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1024f

「やれるようになった方がいいに決まっている」
たったそれだけの決めつけでイチトはスグリの部屋に来た。
小麦粉、ベーキングパウダー、卵、砂糖。
オーブンはわざわざレンタルで借りてきて。

しかしスグリは作業の途中で座り込む。
「ごめんやっぱり無理」
「無理じゃない」
ちゃかちゃかと、小気味好く材料を混ぜる音。

ケーキを焼かないといけない。
あの日みんなが持ってきてくれたケーキを。
スパルタすぎる、とスグリは呟いたがイチトは返事をしなかった。
スグリの愚痴は聞こえていないのかもしれない。

ケーキを焼かないと。
あの日を乗り越えないといけない。
でも手順が魔神の封印の儀式とまったく同じで、だからスグリは、できないのだ。

 

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